3年後には次のApple!?スマートフォン業界の風雲児、Nothingに秘められた大きな野心

最近、ネットでよく話題を見かける気になるスマートフォンがある。コロナ禍にどこからともなく現れた英国のベンチャー企業、Nothing社のスマートフォンだ。デザインを手掛けるのは、次々とかっこいいガジェットを発表して注目を集めるTeenage Engineeringなど新進気鋭のデザイナーたち。。同社の誕生の背景や人気の秘密を表参道で行われたスペシャルエディション発売イベントのために来日した創業CEO、Carl Pei(カール・ペイ)氏に聞いた。

スマートフォンに楽しさを取り戻す

原宿のポップアップストアで先行発売が行われたPhone(2a)のSpecial Edition。ニューヨークの路線図にインスパイアされた背面デザインに、”赤・黄・青”の3原色を散りばめている。

スマートフォンが一般に広まって15年近くが経つ。最初の頃は新しいモデルが登場する度に、そこから新しい未来が開けるような気がして、みんなが新製品ニュースに一喜一憂していた。しかし、この10年ほどはその熱に少し影が差した感じがある。

そんな隙をつくように現れ、一部のトレンドセッター達の間で人気を伸ばしているのが英国のベンチャー企業、Nothing社の製品だ。

世の多くのスマートフォンが、カメラの配置以外の個性がないシンプルでストイックな外観になりつつある中、Nothing社はストレートに見た目のクールさ、若さを追求し注目を集めている。

いちばんの特徴は製品内部の構造をちょっとだけうかがわせる半透明のボディにLEDのライトが独特な配列で並べられている点だ。このLEDはGlyph(グリフ)インターフェースと呼ばれ、電話の着信時や充電時、通知がある時などに光を放つ。さらに起動した時のホーム画面に表示されるアイコンやウィジェットも、この製品専用にデザインされたトーン&マナーが統一された独自の世界観を作っている。

最近ではユーザーがパーツを交換して外観をカスタマイズできるCMF by Nothingというサブブランドも立ち上げ、こちらも併せて人気を博している。

いずれにしても機能的デザインというよりかはファッション感覚に近い装飾的なデザインが強みだが、Nothing創業者のCarl Peiは、これを通して「スマートフォンに楽しさを取り戻す」と豪語する。

Nothing創業者のCarl Pei氏。Nothingのポップアップストアを開く場所としてキャットストリートにこだわったという。

中国系スウェーデン人のカール・ペイは、同社を創業する前からガジェット界のカリスマだった。フィンランドのノキア社や中国のOppo社といった携帯電話メーカーを渡り歩いた後、2013年末に有名中国起業家と共にOnePlusというスマートフォンメーカーを起業しデザインとマーケティングを担当。特徴的な外観の製品が大ヒットし注目の存在となった。

Nothingはそのペイがコロナ禍の2021年にイギリスで創業したベンチャー企業だ。創業時からiPodの生みの親のトニー・ファデルや人気Webサービスの経営者らの出資を受けていること、そして次々とクールなガジェットを生み出して大きな注目を集めていたスウェーデンのTeenage Engineering社を製品デザインのパートナーとして選んだことでも大きな注目を集めていた。

「OnePlusは基本的には統合化ビジネスの会社でクアルコム社のチップやサムスン社のディスプレイなど他社のテクノロジーを調達してきて、それらを組み合わせているだけに過ぎませんでした。同社には7年在籍して多くを学びましたが、私はほんのちょっとだけでも未来を作る側にまわりたいと思うようになりました。こうして同僚何人かとNothingを創業しました。そして、まずは未来を作りたいという思いから同郷でもあるTeenage Engineering社のJasper Kouthoofd(ヤスパー・カウトフーフド)と組むことにしました。というか、ストックホルムの彼らのところに遊びに行き、彼らが絵を描いたり、コンピューターを作ったりしている様子を横で見ながら『テクノロジー業界はなんだか退屈になってしまったね。何か一緒にやらないか』と話しかけたんです。話は盛り上がって気がついたら40分以上話し込んでいました。それがすべてのスタートでした。」(カール・ペイ)。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次